第52回全日本大学駅伝対校選手権大会(11月1日)

中谷雄飛が独走で富洲原橋を上ってきた(残り約2キロ)……、臙脂のユニホームが先頭を走る光景を見るのは何年ぶりだろうか。そう思った瞬間、思わず目頭が熱くなった。早稲田大学の文字も鮮やかなタスキが早大復活ののろしのようにも見えた。

辻文哉の好走で始まった早大の快進撃は5区までつづき、他校の監督は予想もしなかった展開に、少しあわてたかもしれない。しかし、大学駅伝の洗礼を受けていない選手が4人という布陣で、勝てるほどには甘くなかった。トップでタスキを受けた1年生にはプレッシャーがあったかもしれない。とはいえ、1区・三浦龍司(順大)、4区・石原翔太郎(東海大)、5区・佐藤一世(青山学院)は、1年生で区間賞(いずれも区間新)をとっている。今大会、1年生旋風が巻き起こったと言っていいだろう。その風に負けるわけにはいかない。上昇気流の風に乗るだけだ。幸い、早大には、力の拮抗した1年生がそろっている。箱根までの2ヵ月、お互い切磋琢磨しながら、三浦、石原、佐藤の「域」に近づいてほしい。

早大には、この大会で、オンリー・ワンだった記録がある。優勝した駒大から最下位の東北大まで(25校)、4年生が一人も走らなかった大学は、唯一、早大だけなのだ。これを「若くて、将来性のあるチームだ」と、評してはいけない。伊勢から距離がほぼ倍に伸びる箱根では、4年間積み上げてきた距離がものをいう。それは4年生の出番を待っているということだ。果たして、戦える4年生は出てくるのか。奮起を期待したい。

●1区(9.5キロ)

<通過順位=個人区間順位>
1位 順大(三浦龍司)27分07秒(区間新)
2位 城西大(砂岡拓磨)27分10秒(区間新)
3位 駒大(加藤淳)27分13秒(区間新)
4位 國學院大(島崎慎愛)27分15秒(区間新)
5位 明大(児玉真輝)27分15秒(区間新)
6位 早大(辻 文哉:政経1・早実)27分18秒(区間新)

3000m、5000m、1万mと、連続して自己記録を更新していた辻は、上り調子そのままに、トップと11秒差の6位と大健闘。前半の流れをつくり、スターターの役目を十分に果たした。

●2区(11.1キロ)
<通過順位>
1位 城西大 58分47秒
2位 明大 59分00秒
3位 早大 59分09秒
4位 皇學館大 59分10秒
5位 國學院大 59分11秒
<個人区間記録>
1位 川瀬翔矢(皇學館大)31分24秒
2位 菊池駿弥(城西大)31分37秒
3位 池田燿平(日体大)31分39秒
4位 小袖英人(明大)31分45秒
5位 井川龍人(スポ科2・九州学院)31分51秒

エース級がそろった区間で区間5位はまずまずだが、本来の力からすれば、区間賞がほしかった。

●3区(11.9キロ)
<通過順位>
1位 早大 1時間32分51秒
2位 明大 1時間33分11秒
3位 城西大 1時間33分22秒
4位 國學院大 1時間33分23秒
5位 帝京大 1時間33分36秒
<個人区間記録>
1位 中谷雄飛(スポ科3・佐久長聖)33分42秒
2位 塩澤稀夕(東海大)33分45秒
3位 中村唯翔(青山学院)33分46秒
4位 鳥飼悠生(帝京大)33分54秒
5位 鈴木芽吹(駒大)34分07秒

速くて強いエースがとうとう戻ってきた。

●4区(11.8キロ)
<通過順位>
1位 早大 2時間06分14秒
2位 明大 2時間07分06秒
3位 順大 2時間07分24秒
4位 青山学院 2時間07分24秒
5位 東洋大 2時間07分32秒
<個人区間記録>
1位 石原翔太郎(東海大)33分16秒(区間新)
2位 太田直樹(スポ科3・浜松日体)33分23秒(区間新)
3位 野村優作(順大)33分34秒(区間新)
4位 岩見秀哉(青山学院)33分54秒
4位 前田義弘(東洋大)33分54秒

中谷とともに早大の2枚看板になった太田の快走は、つづく後輩たちに大きな勇気を与えた。

●5区(12.4キロ)
<通過順位>
1位 早大 2時間43分08秒
2位 青山学院 2時間43分18秒
3位 駒大 2時間43分39秒
4位 東洋大 2時間43分44秒
5位 明大 2時間43分46秒
<個人区間順位>
1位 佐藤一世(青山学院)35分47秒(区間新)
2位 酒井亮太(駒大)36分02秒(区間新)
3位 大澤 駿(東洋大)36分12秒
4位 本間敬太(東海大)36分18秒
5位 石井一希(順大)36分23秒
9位 菖蒲敦司(スポ科1・西京高)36分54秒

思いついたキャッチフレーズは「最強(西京)の勝負師」菖蒲は、先頭のまま、競り合う場面はなかったが、箱根では「勝負師」の本領を見たい。

●6区(12.8キロ)
<通過順位>
1位 東海大 3時間21分13秒
2位 明大 3時間21分13秒
3位 早大 3時間21分16秒
4位 駒大 3時間21分24秒
5位 東洋大 3時間21分33秒
<個人区間順位>
1位 長田駿佑(東海大)37分22秒(区間新)
2位 大保海士(明大)37分27秒
3位 増田 空(帝京大)37分43秒
4位 山野 力(駒大)37分45秒
5位 越塚遥人(東洋大)37分43秒
8位 諸富 湧(文1・洛南高)38分08秒

東海大、明大に抜かれたものの、諸富は湧き出る闘志で粘る。

●7区(17.6キロ)
<通過順位>
1位 青山学院 4時間12分53秒
2位 東海大 4時間13分32秒
3位 駒大 4時間13分34秒
4位 明大 4時間13分43秒
5位 早大 4時間13分54秒
<個人区間順位>
1位 神林勇太(青山学院)51分17秒
2位 G・ドゥング(日大)51分49秒
3位 P・オニエゴ(山梨学院)51分57秒
4位 小林 歩(駒大)52分10秒
5位 星 岳(帝京大)52分10秒
9位 鈴木創士(スポ科2・浜松日体)52分38秒

復調途上の鈴木は苦しい表情で、松坂駅入口を通過。

●8区(19.7キロ)
<総合順位>
1位 駒大 5時間11分08秒(大会新)
2位 東海大 5時間11分31秒
3位 明大 5時間12分24秒
4位 青山学院 5時間12分42秒
5位 早大 5時間13分04秒
6位 東洋大 5時間13分15秒
7位 帝京大 5時間14分40秒
8位 順大 5時間14分43秒
9位 國學院大 5時間15分16秒
10位 東京国際大 5時間17分05秒
<個人区間順位>
1位 田澤 廉(駒大)57分34秒
2位 L・ムセンビ(東京国際大)57分54秒
3位 名取燎太(東海大)57分59秒
4位 宮下隼人(東洋大)58分28秒
5位 鈴木聖人(明大)58分41秒
6位 山口賢介(文3・鶴丸高)59分10秒 

 

急成長を遂げた山口は、東洋大・宮下に並ばれてからも抜かれることなく、最後は振り切り、大学駅伝初陣はまずまずの結果だろう(上の写真は益子保夫氏提供)。

2020-11-05