第95回東京箱根間往復関東大学駅伝競走(1月2日~3日)

1区で開いた花は、花の2区でしぼみ。4区で息を吹き返すかに見えた猪は、5区で転げ落ち、猛進とはいかなかった。キャプテン清水歓太の踏ん張りはあったものの、出雲、伊勢につづき、箱根もルーキー中谷雄飛に頼るチームから脱皮できなかった。

今年は、往路・復路・総合の新記録だけでなく、区間新記録がいくつも出た。それを天候に恵まれたからだという人がいる。しかし、そんな認識では、高速駅伝の厳しさは理解できない。
4区区間新の相澤晃(東洋大)は5000m13分40秒98、10000m28分17秒37、以下、5区区間新の浦野雄平(國學院大)は、13分59秒23、28分51秒91、6区区間新の小野田勇次(青山学院)は、13分46秒93、28分57秒30、さらに、8区区間新の小松陽平(東海大)は、13分59秒51、28分35秒68という自己記録を持っている。区間新は偶然出たのではなく、出すべき選手が出したのだ。上位校には、13分台、28分台の選手が「ゴロゴロ」と言っていいほどいる。このスピードに、早大の陣容はまだ追いつくことができない。

早大は3位以内を目標に掲げていた。しかし、3位の総合タイムは10時間58分03秒(しかも2選手がブレーキ)。たとえ、ベストメンバーで臨み、各選手がベストの走りをしても、3位には届かなかっただろう(2011年、3大駅伝をすべて新記録で制した3冠チームですら、5時間59分51秒だった)。もう、3位以内という「あいまいな」目標では、上位で戦えない可能性がある。たとえば、総合11時間を切るという具体的な目標設定をして、そのために、10000m28分台、ハーフ62分台(あるいは63分前半)の選手を何人つくるのか。そんな逆算が必要になるかもしれない(まあ、そううまくいくとは思わないが)。駅伝で「箱根は別物」だと言われる。一面では確かにそうだが、他面では、そう考えているうちに、スピード駅伝から取り残されていく恐れもある。

2016年にスーパールーキーがごっそり入った東海大でさえ、箱根の優勝までに3年の年月を要している。早大もその轍(わだち)を見据えながら、新時代の「スピード+スタミナ」、そして、強い魂を兼備した選手を育ててほしい。まずは、トラックからだ。

(扉の写真は、八ツ山橋から品川駅前に向かって力走する小澤)

<1区>21.3キロ
●チーム・個人通過順位
1位 東洋大(西山和弥)1時間02分35秒
2位 中大(中山 顕)1時間02分36秒
3位 青山学院(橋詰大慧)1時間02分41秒
4位 早大(中谷雄飛・スポ科1・佐久長聖)1時02分42秒

終盤まで、団子状態で進んだため、中谷のカミソリ・スパートが炸裂すると思ったが、まだスタミナ不足ということだろう。それでも、秒差の4位は十分な結果だ。

<2区>23.1キロ
●チーム通過順位
1位 国士館
2位 東洋大
3位 中大
18位 早大
●個人区間記録
1位 パトリック・M・ワンブイ(日大)1時間06分18秒
2位 塩尻和也(順大)1時間06分45秒
3位 ライモン・ヴィンセント(国士館)1時間07分12秒
21位 太田智樹(スポ科3・浜松日体)1時間11分08秒

まさかの区間21位。急仕上げでは2区を走れない。それを証明したようなレースぶりで、早大の層の薄さが露呈したともいえる。

<3区>21.4キロ
●チーム通過順位
1位 青山学院
2位 東洋大
3位 駒大
17位 早大
●個人区間記録
1位 森田歩希(青山学院)1時間01分26秒
2位 阿部弘輝(明大)1時間02分07秒
3位 遠藤大地(帝京大)1時間02分32秒
10位 千明龍之佑(スポ科1・東農大二)1時間03分30秒

(おそらく)想定外の位置でタスキを受けたルーキーには、ペース配分も含めて、かなりのプレッシャーがあったはずだ。堅実な走りだったが、力からすれば、もう少しか。

<4区>20.9キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大
2位 東海大
3位 青山学院
14位 早大
●個人区間記録
1位 相澤 晃(東洋大)1時間00分54秒(区間新)
2位 館澤亨次(東海大)1時間02分37秒
3位 清水歓太(スポ科4・中央中等教)1時間03分05秒
3位 横井裕仁(帝京大)同タイム

最後の最後にキャプテンらしい走りを見せた清水。

<5区>20.8キロ
●往路順位
1位 東洋大 5時間26分31秒(新記録)
2位 東海大 5時間27分45秒(新記録)
3位 國學院大 5時間29分15秒
15位 早大 5時間36分06秒
●個人区間記録
1位 浦野雄平(國學院大)1時間10分54秒(区間新)
2位 西田壮志(東海大)1時間11分18秒(区間新)
3位 青木涼真(法大)1時間11分29秒(区間新)
17位 大木皓太(スポ科3・成田高)1時間15分41秒

吉田匠の事故で急遽、エントリー変更されたとはいえ、5区の準備はしてきたはずだから、もう少し走ってもよかった。(写真:宇都宮市・益子さん提供)。

<6区>20.8キロ

●チーム通過順位
1位 東洋大
2位 東海大
3位 駒大
12位 早大
●個人区間記録
1位 小野田勇次(青山学院)57分57秒(区間新)
2位 中島怜利(東海大)58分06秒
3位 今西駿介(東洋大)58分12秒
11位 渕田拓臣(スポ科2・桂高)59分57秒

安定した走りだったが、前回の経験者として、もう1分は縮めたかった。

<7区>21.3キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大
2位 東海大
3位 青山学院
12位 早大
●個人区間記録
1位 林 奎介(青山学院)1時間02分18秒
2位 阪口竜平(東海大)1時間02分41秒
3位 小笹 椋(東洋大)1時間03分45秒
13位 真柄光佑(スポ科3・西武文理)1時間04分56秒

シード圏入りには、7区が勝負どころだった。この集団の中では、真柄の実績が抜けていたにもかかわらず、集団のペースに合わせてしまい、早めに抜け出せなかった。初出場ゆえの経験不足が出たかもしれない。

<8区>21.4キロ
●チーム通過順位
1位 東海大
2位 東洋大
3位 青山学院
12位 早大
●個人区間記録
1位 小松陽平(東海大)1時間03分49秒
2位 飯田貴之(青山学院)1時間04分34秒
3位 鈴木宗孝(東洋大)1時間04分44秒
10位 太田直希(スポ科2・浜松日体)1時間06分42秒

真柄と同じように、初出場の太田も集団のペースにはまってしまった。

<9区>23.1キロ
●チーム通過順位
1位 東海大
2位 東洋大
3位 青山学院
12位 早大
●個人区間記録
1位 吉田圭太(青山学院)1時間08分50秒
2位 湊谷春紀(東海大)1時間09分36秒
3位 小森稜太(帝京大)1時間09分59秒
9位 新迫志希(スポ科3・世羅高)1時間11分00秒

新迫もスーパールーキーと呼ばれた時代があった。距離への対応が遅れ、箱根は3年目にして初出場。まずまずの走りだったが、まずまずでは許されない立場にあるのも確かだ。来シーズンの覚醒に期待大!

<10区>23.0キロ
●復路順位
1位 青山学院 5時間23分49秒
2位 東海大 5時間24分24秒
3位 帝京大 5時間29分40秒
7位 早大 5時間34分33秒
●総合順位
1位 東海大 10時間52分09秒
2位 青山学院 10時間55分50秒
3位 東洋大 10時間58分03秒
12位 早大 11時間10分39秒
●個人区間順位
1位 星 岳(帝京大)1時間09分57秒
2位 鈴木塁人(青山学院)1時間10分10秒
3位 郡司陽大(東海大)1時間10分12秒
7位 小澤直人(スポ科4・草津東)1時間11分58秒

23キロという距離が心配だったが、鋭いラストスパートも見せ、しっかり走り切った。競技人生をいい形で締めくくっただろう。

2019-01-05