新迫志希を除く5人が出雲の初陣だった。先手必勝の出雲では、1区の出遅れは致命傷になる。致命傷を負いながら、前を追う選手たちは「想定外」の展開に戸惑い、焦っただろうと思う。これが駅伝。調子のよさだけでは対応できないことを思い知らされたはずだ。この経験を伊勢、箱根に生かせることができれば、授業料としては実に安いものだ。
結果は「惨敗」である。しかし、この惨敗から引き出されたのは「希望」である。新迫志希にも太田直希にも、希望の片鱗が見えているではないか?
トラックシーズン苦しんでいた中谷雄飛が駅伝舞台で、他校のエースと互角に渡り合い、評判どおりの力を見せてくれた。選手層が薄い上に、故障選手も多く、「とにかく調子のいい選手から使う以外に選択肢はなかった」(相楽豊監督)という状況の中で、(実は!)出雲で躍動したのは、駅伝オーダーから外れた吉田匠、千明龍之佑だった。
駅伝終了後に、浜山公園陸上競技場で行われた出雲市陸協記録会の5000mで、それぞれ自己記録を更新。13分台に迫る、内容の濃いレースだった。「正直、オーダーから外れた悔しさは残ったが、全日本と箱根は絶対に出るという思いで走った。ラストに課題は残ったが、今後に向けて、手ごたえはあった」と吉田が言うように、千明とともに反発心に火が付いたのは確かだ。これで、競争はさらに激しくなり、その結果、底上げもさらに進むだろう。有力選手の復帰も控え、悲観材料は少しもない。
とはいえ、青山学院の背中は、はるか遠くにしか見えない。どこまで近づけるのだろうか。
(扉の写真:6区残り1キロ、清水は日体大・林田元輝を追い詰めるが、わずかに届かず)
●1区(8.0キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院(橋詰大慧)23分15秒
2位 東洋大(相澤 晃)23分21秒
3位 城西大(荻久保寛也)23分28秒
19位 早大(半澤黎斗=スポ科1・学法石川)24分30秒
まさかのアクシデント(脱水症状)で、大失速しながらも、タスキをつないだ気力は、高校時代に培ったものだろう。やはり大物なのだ。
●2区(5.8キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 39分41秒
2位 東海大 40分04秒
3位 東洋大 40分15秒
16位 早大 41分39秒
<個人区間記録>
1位 鈴木塁人(青山学院)16分26秒
2位 館澤亨次(東海大)16分29秒
3位 硴野魁星(拓大)16分47秒
12位 小澤直人(スポ科4・草津東)17分09秒
4年生にして初駅伝、そのうえ、想定外の出遅れ。そのプレッシャーが力みにつながったかもしれない。ただし、「弱気が心配だったが、前半あれだけ突っ込めたのは、驚いたし、収穫だった」という相楽監督の評価もあった。
●3区(8.5キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 1時間05分02秒
2位 拓大 1時間05分38秒
3位 東洋大 1時間06分16秒
11位 早大 1時間07分03秒
<個人区間記録>
1位 ワークナー・デセレ(拓大)25分17秒
2位 森田歩希(青山学院)25分21秒
3位 山本修二(東洋大)25分23秒
4位 中谷雄飛(スポ科1・佐久長聖)25分24秒
さすがスーパールーキー。青山と東洋のエースと3秒差、1秒差で駆け抜けた中谷。、次は上位での競り合いを見たいものだ。
●4区(6.2キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 1時間23分02秒
2位 東洋大 1時間23分47秒
3位 拓大 1時間24分11秒
11位 早大 1時間25分38秒
<個人区間記録>
1位 吉田圭太(青山学院)18分00秒
2位 關 颯人(東海大)18分06秒
3位 廻谷 賢(日体大)18分08秒
12位 新迫志希(スポ科3・世羅高)18分35秒
中谷のつくった上げ潮に乗れなかった新迫。日体大・廻谷の快走があったとはいえ、21秒あったアドバンテージを守れず、逆に6秒差をつけられた。このままでは終われないゾ!
●5区(6.4キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 1時間41分50秒
2位 東洋大 1時間42分17秒
3位 東海大 1時間43分13秒
11位 早大 1時間44分48秒
<個人区間記録>
1位 今西駿介(東洋大)18分30秒
2位 生方敦也(青山学院)18分48秒
3位 郡司陽大(東海大)18分51秒
6位 太田直希(スポ科1・浜松日体)19分10秒
出場できなかった兄貴(智樹)の分まで取り返す! そこそこの結果だったが、そこそこを抜け出すことが必要だ。期待のルーキーたちの熾烈なエントリー争いは箱根までつづく。
●6区(10.2キロ)
<チーム順位>
1位 青山学院 2時間11分58秒
2位 東洋大 2時間12分10秒
3位 東海大 2時間13分31秒
10位 早大 2時間15分34秒
<個人区間記録>
1位 𠮷川洋次(東洋大)29分53秒
2位 竹石尚人(青山学院)30分08秒
3位 M・マクドナルド(アイビーリーグ選抜)30分15秒
6位 清水歓太(スポ科4・群馬中央中等)30分46秒
このメンバーなら、区間賞がほしかった。キャプテンとして、「ボクも含めて、最低の結果。ただ、夏合宿で順調に距離を踏めているので、距離の伸びる全日本、箱根では巻き返しができる」と、前向きな発言に力を込めた。
●出雲市陸協記録会一般男子5000m
<2組>
1着 神林勇太(青山学院)13分58秒70
2着 湯原慶吾(青山学院)14分00秒71
3着 千明龍之佑(スポ科1・東農大二高)14分02秒16(自己新)
4着 湊谷春起(東海大)14分02秒44
5着 梶谷瑠哉(青山学院)14分03秒18
6着 小野寺悠(帝京大)14分04秒61
7着 吉田 匠(スポ科2・洛南高)14分07秒40(自己新)
ここでも青山学院は強かった(先頭が1着の神林。2番手の右に千明、左に吉田、その後ろ、6着の小野寺、最後尾、2着の湯原)。