終わってみれば、昨年と同じ3位、条件が違うとはいえ、記録は3分も上回っていた。
「疾風に勁草を知る」とは山梨学院の上田誠仁監督が好んで使う金言だが、今は、文字通り強風をものともせず快走した清水歓太に与えられるべき言葉のように思う。今回大会の特徴は、各校、計算できる強力な選手たちが次々に崩れていったことだろう。早大も例外ではなかった。その「乱戦」を耐えて粘った選手たちの健闘を大いに讃えたい。しかし、メディアが報じる「大健闘」では決してない。本来、持てる力を「普通に」発揮すれば、このくらいの結果は「当然」残せるチームだったのだ。低すぎる下馬評はなんだったのかと改めて思う。
キャプテン安井雄一が崩れそうになった往路の流れをしっかり立て直し、安井からキャプテンのタスキを受けた清水歓太が往路同様、崩れそうな復路の流れを変えた。キャプテンが「お手本」を示し、新キャプテンがそれに応えた。新チームも幸先の良いスタートが切れたのではないだろうか。
9区に入るまで、三大駅伝で一つもとれなかった区間賞を清水が意地で奪い取ったことも特筆されることだ。
余談だが、私は駅伝ファンの後輩何人かに宛てた年賀状に「往路優勝、総合3位を狙える」と書き添えた。ただし、あくまで(私が勝手に考えた)ベストメンバーが組めた場合だけだと思っていた。しかし、これだけ層の薄い中で、新迫志希が使えず、永山博基もエース区間を走れなかった。それでも、3位を死守した価値は、かなり高いと思う。
一方、私には「今年はシード権争いですね」と書かれた年賀状が3通も届いた。教訓:新聞・雑誌やネットの下馬評を鵜呑みにしてはいけない。
追記:今(1月4日午前10時)、安井雄一の部員日記を読んで、涙がとまらなくなりました。こんなに家族思いで、心根の優しい人間が、厳しい戦いの場に身を置いていることが信じられれないほどです。しかし、考えてみたら、優しさこそ強さの根源。弱い人間ほど強がるものです。人間の本当の強さをいまさらながらに教えてくれたキャプテンに「日本国民」を代表して、感謝します。
<1区>21.3キロ
●チーム(個人)区間順位
1位 東洋大(西山和弥)1時間02分16秒
2位 國學院大(浦野雄平)1時間02分30秒
3位 駒大(片西 景)1時間02分32秒
11位 早大(藤原滋記=スポ科4・西脇工業)1時間02分52秒
1時間2分台に12選手が「ひしめく」混戦となった。藤原の区間順位は11位だが、トップと36秒、3位と20秒差なら、まずまずの滑り出しだ(京急蒲田駅前)。
<2区>23.1キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大 2時間09分34秒
2位 青山学院 2時間09分56秒
3位 神大 2時間10分10秒
6位 早大 2時間10分56秒
●個人区間記録
1位 森田歩希(青山学院)1時間07分15秒
1位 ドミニク・ニャイロ(山梨学院)1時間07分15秒
3位 相澤 晃(東洋大)1時間07分18秒
6位 太田智樹(スポ科2・浜松日体)1時間08分04秒
順大のスーパーエース・塩尻和也(前)と同時にタスキを受けた太田。絶不調の塩尻をかわすと計5人を抜き、3位進出の足掛かりをつくった(保土ヶ谷駅前)。
<3区>21.4キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大 3時間11分51秒
2位 青山学院 3時間12分37秒
3位 早大 3時間14分29秒
●個人区間記録
1位 山本修二(東洋大)1時間02分22秒
2位 田村和希(青山学院)1時間02分37秒
3位 鬼塚翔太(東海大)1時間03分29秒
4位 光延 誠(スポ科4・鳥栖工業)1時間03分33秒
前を行く東洋、青山との差は開いたが、光延は3人を抜いて3位に躍り出る(平塚駅入口を通過)。
<4区>20.9キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大 4時間14分13秒
2位 青山学院 4時間16分16秒
3位 神大 4時間16分52秒
5位 早大 4時間18分21秒
●個人区間記録
1位 大塚 倭(神大)1時間02分21秒
2位 吉川洋次(東洋大)1時間02分22秒
3位 土方英和(國學院大)1時間02分36秒
11位 石田康幸(商4・浜松日体)1時間03分52秒
往路優勝のためには、ここで東洋、青山との差を詰めたかったが、安定感ピカ一だった石田は最終ランで、真価を発揮できなかった(国府津駅過ぎ)。不本意な結果だろうが、ここまでチームを引っ張ってきた石田の貢献度は高い。
<5区>20.8キロ
●チーム通過順位
1位 東洋大 5時間28分29秒
2位 青山学院 5時間29分05秒
3位 早大 5時間30分25秒
●個人区間記録
1位 青木涼真(法大)1時間11分44秒
2位 安井雄一(スポ科4・市立船橋)1時間12分04秒
3位 細谷恭平(中央学院)1時間12分17秒
宇都宮市益子さん提供(大平台)。
毎回写真の撮れない区間。安井はさすがの走りを見せた。ただ、「良くても区間賞、悪くても区間賞」をとれなかったのは悔しい。
<6区>20.8キロ
●チーム通過順位
1位 青山学院 6時間27分08秒
2位 東洋大 6時間28分00秒
3位 早大 6時間30分54秒
●個人区間記録
1位 小野田勇次(青山学院)58分03秒
2位 中島怜悧(東海大)58分36秒
3位 佐藤敏也(法大)58分40秒
11位 渕田拓臣(スポ科1・桂高)1時間00分29秒
ルーキーでは山下りスペシャリスト渕田が最初に箱根デビュー。期待と不安のプレッシャーがかかる中、しっかり走り切った(宮ノ下)。
<7区>21.3キロ
●チーム通過順位
1位 青山学院 7時間29分24秒
2位 東洋大 7時間32分52秒
3位 早大 7時間37分14秒
●個人区間順位
1位 林 奎介(青山学院)1時間02分16秒
2位 住田優範(日体大)1時間04分50秒
3位 渡邊奏太(東洋大)1時間04分52秒
12位 永山博基(スポ科3・鹿児島実業)1時間06分20秒
「エース」は、やはり戻っていなかった。これも一つの運だろう(国府津駅手前)。永山がエースの座を奪い返すことができれば、駅伝チームの前途は洋々だ(むろんダブルエース、トリプルエースが理想だが)。
<8区>21.4キロ
●チーム通過順位
1位 青山学院 8時間34分10秒
2位 東洋大 8時間40分25秒
3位 東海大 8時間44分50秒
5位 早大 8時間45分55秒
●個人区間記録
1位 下田裕太(青山学院)1時間04分46秒
2位 館澤亨次(東海大)1時間06分17秒
3位 山口和也(日体大)1時間06分35秒
14位 大木皓太(スポ科2・成田高)1時間08分41秒
苦いデビュー戦になった大木。急仕上げだったと思うが、着実に力はつけているので、ここからだ(写真撮れず)。
<9区>
●チーム通過順位
1位 青山学院 9時間46分01秒
2位 東洋大 9時間51分23秒
3位 東海大 9時間56分20秒
4位 早大 9時間56分34秒
●個人区間記録
1位 清水歓太(スポ科3・群馬中央中等)1時間10分39秒
2位 堀合大輔(駒大)1時間10分47秒
3位 小早川健(東洋大)1時間10分58秒
今シーズンの不調がうそのような快走の清水。大柄な法大・磯田和也(後ろ)を風よけに使うという消極的な戦法をとらなかったことに清水の気迫を見た(神奈川新町駅前)。
<10区>
●チーム総合順位
1位 青山学院
10時間57分39秒(往路2位:5時間29分06秒、復路1位:5時間28分34秒)
2位 東洋大
11時間02分32秒(往路1位:5時間28分29秒、復路2位:5時間34分03秒)
3位 早大
11時間09分09秒(往路3位:5時間30分25秒、復路7位:5時間38分44秒)
●個人区間順位
1位 小笹 椋(東洋大)1時間11分09秒
2位 橋間貴弥(青山学院)1時間11分38秒
3位 中川翔太(日体大)1時間11分48秒
8位 谷口耕一郎(スポ科4・福大大濠)1時間12分35秒
競技生活最後の最後につかんだ箱根はなんと最終区間。谷口のフィナーレにふさわしい「いいフィニッシュ」だった(北品川駅前)。