第29回出雲全日本大学選抜駅伝競走(10月9日)

結果だけ見れば、早稲田ファンはちょっとがっかりしたかもしれない。しかし、トラックシーズンの戦績を考えれば「負け惜しみではなく」スピード勝負の出雲は想定内の「負け」だろう。「今回、あえて目標順位を設定しなかった」と言う相楽監督も「最低限の想定内」という評価だ。3区、4区のブレーキが痛かったとはいえ、永山、新迫ともに、ここまで順調な経過をたどってきたわけではない。むしろトップとの差を詰めた区間が一つもなかったことに課題が残った。選手層の薄い中で、Bチームも含めて個々の力をさらに高め、総合力アップを図るしかないだろうが、Bチームを率いる駒野コーチは「楽しみな選手はいる」と自信ありげだった。

三段跳びで表現すれば、出雲はホップ。無理して跳べば、次のステップが苦しくなる。今回はゆるりと跳んだ一歩だから、二歩目を踏み出すエネルギーは十分たまっている。そのエネルギーに点火するのは、4年生の石田康幸だ。今回、出場メンバーから外れた「うっぷん」を伊勢路で、はらしてほしいと思う。

今回走った4年生はそれぞれが「最低限の仕事はできた」と語っていたが、伊勢では「上々の仕事ができた」、箱根では「完璧な仕事ができた」と変化していかない限り、道は開けてこない。変化のカギは石田にあり!

今年のチームの特徴から、ホップの出雲8位以内、ステップの伊勢6位以内、ジャンプの箱根3位以内というのが、私の勝手な予想だった。出雲9位を踏まえて、予想を少し上方修正しよう(下方ではない)。
ロードでは、(東海を除く)上位との走力差が案外少ないと感じたからだ。永山、新迫のコンディションさえ整えば、石田康幸、清水歓太あるいは新勢力を加え、伊勢は3位まで狙える! そして、ホップ・ステップ・ジャンプ方式でいけば、箱根は優勝しかないということになる(世の中、そんなに甘くないと、エビ中は歌っているが)。

<1区>8.0キロ
●チーム通過順位・個人区間記録
1位 東海大 23分16秒(坂口竜平)
2位 神奈川大 23分18秒(山藤篤司)
3位 中央学院 23分29秒(大森 澪)
7位 早 大 23分54秒(太田智樹/スポ科2・浜松日体)

残り1500m、日体大・吉田亮壱との8、9位争い。太田は吉田に競り負けたが、前をいく青学、駒大を捉え、それぞれ6、7位でつなぐ。「東海、神大が動いたとき、ついていけなかったのが、すべて。10秒差くらいではつなぎたかった」(太田)。それでも、終盤は前を拾う粘り強さを見せた。

<2区>5.8キロ
●チーム通過順位
1位 東海大 39分23秒(館澤亨次)
2位 神奈川大 39分40秒(荻野太成)
3位 青山学院 39分41秒(田村和希)
6位 早 大 40分19秒(光延 誠)
●個人区間記録
1位 田村和希(青山学院)15分47秒(区間新)
2位 館澤亨次(東海大)16分07秒
3位 下 史典(駒大)16分15秒
7位 光延 誠(スポ科4・鳥栖工業)16分25秒

「青山学院・田村についていけば、上位にとりつけると思った」光延だが、田村のペースがあまりに速いので、「ちょっと、ひるんだ」ため、抑えてしまったのが、最後まで響いた。「伊勢では消極的にならず、巻き返したい」とリベンジ宣言(写真は3.3キロ地点)。右の写真は、さよならパーティの舞台で、Vの字の中にいる(ように見える)光延。

<3区>8.3キロ
●チーム通過順位
1位 青山学院(下田裕太)1時間04分29秒
2位 東洋大(山本修二)1時間04分32秒
3位 東海大(松尾淳之介)1時間04分34秒
9位 早 大(永山博基)1時間06分51秒
●個人区間記録
1位 塩尻和也(順大)24分17秒
2位 山本修二(東洋大)24分29秒
3位 下田裕太(青山学院)24分48秒
11位 永山博基(スポ科3・鹿児島実業)25分56秒

中間点を過ぎて、後方から日体大・小町、駒大・工藤、法大・青木が迫る。早大はエース不在と言われる。しかし、相楽監督にとっては、箱根で2区を任せ、出雲でも不安を承知の上で、エース区間に起用した永山こそが間違いなくエースなのだ。「ハートの(強い)エースが出てこない」ようでは、勝機が遠ざかる。

<4区>6.2キロ
●チーム通過順位
1位 東海大(鬼塚翔太)1時間22分46秒
2位 青山学院(小野田勇次)1時間23分00秒
3位 東洋大(吉川洋次)1時間23分16秒
9位 早 大(新迫志希)1時間25分56秒
●個人区間記録
1位 鬼塚翔太 18分12秒
2位 小野田勇次 18分31秒
3位 廣 佳樹(中央学院)18分44秒
10位 新迫志希(スポ科2・世羅高)19分41秒

新迫の調子は上向いていたとはいえ、やはり順調さを欠いたこれまでのプロセスが影響したのだろう。

<5区>6.4キロ
●チーム通過順位
1位 東海大(三上嵩人)1時間42分01秒
2位 青山学院(神林勇太)1時間42分38秒
3位 東洋大(今西駿介)1時間43分41秒
9位 早 大(藤原滋記)1時間45分41秒
●個人区間記録
1位 三上嵩人(東海大)19分19秒
2位 富安 央(日体大)19分19秒
3位 神林勇太(青山学院)19分38秒
5位 藤原滋記(スポ科4・西脇工業)19分45秒

藤原の体つきが戦闘モードに変わってきた(ような気がする)。この区間では区間賞がほしかったが、次走に期待できる走りだった。

<6区>10.2キロ
●総合順位
1位 東海大(關 颯人)2時間11分59秒
2位 青山学院(橋詰大慧)2時間13分32秒
3位 日体大(辻野恭成)2時間14分39秒
9位 早 大(安井雄一)2時間16分24秒
●個人区間記録
1位 關 颯人(東海大)29分58秒
2位 ベンジャミン・デハーン(アイビーリーグ選抜)30分34秒
3位 辻野恭成(日体大)30分40秒
4位 安井雄一(スポ科4・市立船橋)30分43秒

これほど余裕をもって走る安井を見たことがない。単独走でなかったら、区間賞も狙えたのではないかと思わせる走りだった。

 

 

 

2017-10-11