まずは、いい話から始めよう。4年生にして、初めて三大駅伝出場を果たした鈴木洋平が、追い風にも乗って区間新をマーク(4区区間賞)。予想外の苦戦を強いられた早大の中で、ただ一人、気を吐いた。「残り1キロあたりで、前=東洋大のルーキー渡邉秦太=が見えたので、4年生の意地にかけても抜いてやろうと思った」と言う気迫のこもった走りには、沿道から期せずして「洋平コール」が湧き起こったほどだ。伊勢につなぐべきは、間違いなく「洋平魂」だ。
平和真は「スタートしてすぐに、体が動かないのを感じた」。それでも「なんとか4キロまでは前で走ろう」と(実際にはスローペースもあって6.5キロまで)先頭を譲らずに走りつづけた。しかし、勝負どころのラスト1キロを前にして、トップ集団から脱落、一気に離された。好調を伝えられ、自分でも自信をもって臨んだ1区で、まさかの13位。「1区がすべてだった」と言う相楽豊監督の言葉がやはり「すべて」だっただろう。
今年のチームは「三大駅伝のすべて3位以内、そして1冠は獲る」を目標に掲げていた。関東インカレ、日本インカレの流れを見て、実は「冠」の可能性が高いのは出雲ではないかと思っていた。しかし、そう甘くはなかった。5000m13分台の選手を13人揃える青山学院、東海大、粒ぞろいに加え、切り札ニャイロを擁する山梨学院はやはり強かった。早大の巻き返しは容易なことではない。それでも、4年生は「このままでは終わらない。練習から見直して、あくまで1冠は狙いに行く」を口にした。4年生が100%の力を出し切った年の早大は「いつも強い!」ぞ。
(扉の写真はラスト1キロ手前で、タイムを確認する鈴木。区間賞を確信した瞬間かもしれない)
●1区(8.0キロ)
1位 日体大(小松巧弥)23分23秒
2位 東海大(鬼塚翔太)23分26秒
3位 山梨学院(上田健太)23分26秒
13位 早大(平 和真:スポ科4・豊川工業)24分12秒
左・上田健太(山梨学院=3位)、右・櫻岡駿(東洋大=7位)、その後ろ鬼塚翔太(東海大=2位)らと先頭を争う平(6.3キロ地点)。終盤の失速は3年前の柳利幸を思い起こし、1区は「鬼門」の言葉も浮かんだ。
●2区(5.8キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 39分57秒
2位 東海大 40分00秒
3位 山梨学院 40分20秒
12位 早大 41分55秒
<個人区間順位>
1位 田村和希(青山学院)16分24秒
2位 館澤亨次(東海大)16分34秒
3位 秦 将吾(山梨学院)16分54秒
12位 新迫志希(スポ科1・世羅高)17分43秒
7秒差あった京産大に追いつき、3.5キロを通過する新迫。初陣の新迫にとっては、キャプテンの出遅れに動揺もあっただろう。また、強い向かい風も軽量の新迫にはこたえ、最後は10秒差に開かれた。同じ1年生の東海大・館澤に1分以上やられた悔しさは伊勢ではらす。
●3区(8.5キロ)
<チーム通過順位>
1位 東海大 1時間04分50秒
2位 青山学院 1時間05分13秒
3位 山梨学院 1時間05分47秒
9位 早大 1時間07分16秒
<個人区間順位>
1位 關 颯人(東海大)24分50秒
2位 塩尻和也(順大)24分51秒
3位 服部弾馬(東洋大)24分59秒
7位 武田凜太郎(スポ科4・早実)25分21秒
武田は「もっと、前半から突っ込まなければいけなかったのに、強風にためらってしまった」が、ジリジリと前を追い上げ、京産大、第一工業大、帝京大を抜き、9位に浮上。
●4区(6.2キロ)
<チーム通過順位>
1位 東海大 1時間22分41秒
2位 青山学院 1時間22分52秒
3位 山梨学院 1時間23分32秒
8位 早大 1時間24分50秒
<個人区間順位>
1位 鈴木洋平(スポ科4・新居浜西)17分34秒(区間新)
2位 茂木亮太(青山学院)17分39秒(区間新)
3位 下 史典(駒大)17分39秒(区間新)
「出遅れていたので、とにかく、中間点までは突っ込んでいこうと考えていた。沿道から、鈴木ではなく、洋平と呼ばれて応援されたのがうれしかった。ケガで走れなかった間、多くの人に支えられたので、その人たちに応えるべく、がんばろうと思った。だから、結果を出せて、素直にうれしい」(鈴木洋平)右の写真:区間賞の賞状・賞品の入った紙袋を下げ、Vサイン。
●5区(6.4キロ)
<チーム通過順位>
1位 青山学院 1時間40分35秒
2位 東海大 1時間40分37秒
3位 山梨学院 1時間41分35秒
8位 早大 1時間42分57秒
<個人区間順位>
1位 安藤悠哉(青山学院)17分43秒(区間新)
2位 三上嵩人(東海大)17分56秒
3位 永戸 聖(山梨学院)18分03秒
5位 光延 誠(スポ科3・鳥栖工業)18分07秒
「ロードでの苦手意識がちょっと出てしまった。監督から区間賞を獲れと言われ、自分でも十分狙えると思っていた。しかし、洋平さんのつくった流れに乗れずに、申しわけなかった。練習の成果がロードで生かせていないので、3週間でしっかり改善して、伊勢では、”もう、やるしかない”」(光延誠)
●6区(10.2キロ)
<順位>
1位 青山学院 2時間10分09秒
2位 山梨学院 2時間10分40秒
3位 東海大 2時間11分13秒
8位 早大 2時間14分20秒
<個人区間順位>
1位 ドミニク・ニャイロ(山梨学院)29分05秒
2位 一色恭志(青山学院)29分34秒
3位 高砂大地(中央学院)30分09秒
10位 井戸浩貴(商4・龍野高)31分23秒
昨年同様10位という結果に、井戸は「昨年のリベンジのつもりで走ったが、結果として、昨年と同じことをしてしまった。失敗を繰り返さないよう練習から見直して、あと二つ悔いの残らないレースをしたい」と、次を見すえた。
<出雲市長距離記録会>(10月10日 島根県立浜山公園陸上競技場)
●5000m2組
6着 太田智樹(スポ科1・浜松日体)14分13秒81
17着 安井雄一(スポ科3・市立船橋)14分22秒95
(左)中団から3600mで先頭に立った太田、残り2周でペースが上がると、つききれなかった。(右)安井は前半から積極的にレースを進めた。しかし、太田とは、逆に3600mからズルズルと後退。練習の強さがなかなかレースに出ない、もどかしさの残るレースだった。出雲不出場の悔しさをバネにするはずの2選手には、伊勢での活躍が大いに期待される。