早大を含めて4強と表現していたメディアが、いつの間にか、駒大、東洋、日体大の3強と呼ぶようになっていた。早大の力は3校の一段下にあると評価されたのだ。実はそこに、早大のつけこむスキがあるだろうと思っていた。
しかし、終わって見れば、3強がそのまま上位を占めた。
早大は、たとえベストオーダーを組めたとしても、東洋大の10時間52分51秒には、とても及ばなかっただろう。その意味では、東洋の1強だったといえる。
それにしても、この3年、「12月に故障者を出す」、「4年生が走れない」という同じ過ちを繰り返しているのは、あまりに芸がなさすぎはしないだろうか。
昨年、勝つためには、2P(プレパレーション=準備とピーキング)も重要だと書いた。
残念ながら、両方ともうまくいったとはいえない。
前回の経験者が7人もいながら、走ったのはわずか3人。4年生は大迫だけというのはいかにもさびしい。新戦力が出てきたという言い方もあるだろう。しかし、成長力、管理能力がなかったとも言える。これでは、経験というアドバンテージを生かすことはできない。
今回走った選手はそれぞれが、自分の持てる力を発揮し、来期につながる走りをしたと思う。この経験を強みにしながら、自己管理を怠らず、来年こそはピークの状態で大舞台に立つよう心がけてほしいものだ。
各校のレベルがここまで上がってくると、箱根に向けて、12月から追い込んでいくという、これまでの練習方法では、限界があるように思う。
1年を通して、一人ずつ、一歩ずつ、5000m13分台、10000m28分台、ハーフ62分台をめざし、近づき、突入していくという気構えが必要だろう。そのうえで、粘り強さ、勝負強さをどんな形で身につけていくのか。監督の手腕と選手たちの自覚が要求される。
<総合順位>
1位 東洋大10時間52分51秒
(往路1位:5時間27分13秒、復路1位:5時間25分38秒=復路新)
2位 駒 大10時間57分25秒
(往路2位:5時間28分12秒、復路2位:5時間29分13秒)
3位 日体大11時間03分51秒
(往路4位:5時間33分45秒、復路3位:5時間30分06秒)
4位 早 大11時間04分17秒
(往路3位:5時間32分22秒、復路4位:5時間31分55秒)
●1区(21.4キロ)
<チーム順位・個人区間記録>
1位 日体大(山中秀仁)1時間01分25秒
2位 駒 大(中村匠吾)1時間01分36秒
3位 東洋大(田口雅也)1時間01分46秒
5位 早 大(大迫 傑)1時間02分14秒
まさかの5位だが、タイム的には服部翔太を競り落として区間賞をとった前々回(62分03秒)とほとんど変わらない。3位までが61分台というレベルの高さに注目すべきだろう(品川駅前)。練習拠点をアメリカに置いた大迫の生き方に批判があるかもしれない。しかし、この選択は「駅伝大学」では決してできない。世界をめざす大迫の強い決意と監督の勇断は、むしろ賞賛すべきだと思う。
●2区(23.2キロ)
<個人区間記録>
1位 高田康暉(スポ科2・鹿児島実業)1時間08分18秒
2位 村山謙太(駒大)1時間08分27秒
3位 服部勇馬(東洋大)1時間08分43秒
3大駅伝を通して、高田の自信満々の走りは光っていた。それでも区間賞には届かなかった。箱根のエース区間でようやく勝ち取った初の区間賞は価値が高い(保土ヶ谷駅手前)。
●3区(21.5キロ)
<個人区間記録>
1位 設楽悠太(東洋大)1時間02分13秒
2位 八木沢元樹(明大)1時間03分27秒
3位 油布郁人(駒大)1時間03分34秒
5位 武田凜太郎(スポ科1・早実)1時間04分00秒
武田は、区間賞の設楽祐太には2分近くやられたが、区間3位の油布郁人と26秒差なら、十分合格点だ(平塚駅入り口)。1年生ながら、常に「外さない」走りができるのは強力な武器だ。
●4区(18.5キロ)
<個人区間順位>
1位 中谷圭佑(駒大)54分41秒
2位 平 和真(スポ科1・豊川工業)55分03秒
3位 今井憲久(東洋大)55分15秒
距離に不安のあった平は、最短区間に起用され、快走! しかし、高校時代からのライバル中谷圭佑(駒大)にやられた悔しさは残っただろう(15キロ地点で給水)。これからも対決の場はしばしばあるはずだ。中谷に雪辱できたとき、早大の優勝がみえるのかもしれない。
●5区(23.4キロ)
<個人区間記録>
1位 設楽啓太(東洋大)1時間19分16秒
2位 服部翔太(日体大)1時間19分17秒
3位 馬場翔太(駒大)1時間19分54秒
12位 高橋広夢(スポ科3・東大附属)1時間22分28秒
山本修平の代役を果たした高橋。山登りの準備が万端だったわけではない。不安もあったのだろう。慎重に入り、後半粘りのある走りを見せてくれた(大平台を通過=益子保夫氏提供)。
●6区(20.8キロ)
<個人区間順位>
1位 廣瀬大貴(明大)58分16秒
2位 三浦雅裕(スポ科2・西脇工業)58分51秒
2位 鈴木悠介(日体大)58分51秒
軸のしっかりした走りの三浦は、追う日体大・鈴木悠介を1歩も寄せつけず、東洋、駒大との差を詰めた。ちょっと早すぎるが、来年は山本と三浦で、山の完全制覇を果たしそうな勢いを感じた。
●7区(21.3キロ)
<個人区間記録>
1位 服部弾馬(東洋大)1時間03分27秒
2位 小椋裕介(青山学院)1時間03分37秒
3位 西山雄介(駒大)1時間04分04秒
5位 柳 利幸(教2・早大本庄)1時間04分29秒
これまで、駅伝で結果を出せなかった柳が上位に食い込み、箱根路で、ようやく力の片りんを見せた。本人はまだ満足していないだろうが、いやな流れを断ち切れたのは大きい(国府津駅手前)。
●8区(21.5キロ)
<個人区間記録>
1位 高久 龍(東洋大)1時間04分35秒
2位 有村優樹(明大)1時間05分21秒
3位 沼田大貴(中央学院)1時間05分47秒
9位 井戸浩貴(商1・龍野高)1時間06分30秒
これほど急成長した選手が、かつて早大にいただろうか。そして、箱根の厳しさも知ったはずだ。この成長力を持続してもらいたいと誰もが願っているだろう(有楽町の火災の影響で電車が遅れ、写真撮れず)
●9区(23.2キロ)
<個人区間順位>
1位 矢野圭吾(日体大)1時間8分29秒
2位 窪田 忍(駒大)1時間8分56秒
3位 藤川拓也(青山学院)1時間9分23秒
7位 田口大貴(スポ科3・秋田高)1時間10分33秒
故障による出遅れを、上尾で完全に払拭した田口だったが、仕上がり過ぎていたのか、やや不本意な結果だった。1分は縮めてほしかった(保土ヶ谷駅すぎで監督から給水)。
●10区(23.1キロ)
<個人区間順位>
1位 大津顕杜(東洋大)1時間09分08秒
2位 其田健也(駒大)1時間10分30秒
3位 杉山連哉(帝京大)1時間10分52秒
10位 中村信一郎(スポ科2・高松工芸)1時間11分32秒
先行する日体大・甲斐翔太に食い下がる中村。最後は力の差が出てしまった(八ツ山橋すぎ。中村の写真は人が前に乗り出してきて撮れず)。