第22回出雲全日本大学選抜駅伝(10月11日)

 予想通りというべきか、「今年は三つとも狙う」(渡辺監督)からには、予定通りというべきか、いずれにせよ、まずは、14年ぶり、めでたい一冠の獲得である。
 全国津々浦々から八百万神が参集する神在月(かみありづき)の出雲に、全国の選び抜かれた学生ランナーが集い競う選抜駅伝。神々の祝福を一身に受けたのは早大のランナーたちだった。出場選手全員が、1万M28分台。史上最速チームの神宿る双脚(ほめすぎだが)に支えられたエンジの襷は、先頭を一度も譲ることなく、クロネコもゆうパックも敵わぬ大会新記録の速さで、魂をこめ「配達」された。インカレにつづき、「早くて強い、強くて早い」選手づくりの成果がはっきり見えたレースだった。
 三段跳びでいえば、出雲は箱根へのホップに過ぎないという言い方もできる。しかし、ホップがうまく踏めないことには、いいステップ、ジャンプは望めない。その点で、早大にとって、鬼門だった出雲の扉をこじ開けた意味は大きい。ビクトリーロードは、少なくとも、伊勢まではつながったように見える。

スタート前の応援風景。校友会設立125周年の横断幕「ともに世界へ、ともに未来へ」が10月とは思えない強い陽光に輝く。

[総合成績]

1位 早稲田大学 2時間10分05秒(大会新記録)
2位 日本体育大学 2時間11分16秒
3位 駒澤大学 2時間11分28秒
4位 東洋大学 2時間11分59秒
5位 山梨学院大学 2時間12分09秒
6位 東京農業大学 2時間13分04秒
7位 中央大学 2時間13分20秒
8位 明治大学 2時間14分19秒

<1区>8.0キロ◎矢澤 曜

コスマス(山梨学院)と並走しながら6.5キロを通過する矢澤。1週間前に、軽い肉離れを起こし、「練習のペースを落とした」(矢澤)影響をまったく感じさせない安定した走りだった。「不安もあったが、コスマスについていって、後続をできるだけ離そうと思っていた。7キロで少しペースを上げたら、ついてこなかったので、そのまま上げていった。17秒も離してつなげたのは満足」(矢澤)。インカレ5000mで後塵を拝した京産大・三岡大樹にも19秒差をつけ、リベンジを果たした。

[区間記録]
1位 矢澤 曜(早大)23分07秒
2位 オンディバ・コスマス(山梨学院)23分24秒
3位 三岡大樹(京産大)23分26秒

<2区>5.8キロ◎大迫 傑

3.5キロを通過する大迫。27℃を超える気温に加え、2mを超える向かい風に苦しみ、思い通りにペースを上げられず、思わず時計に目をやる。この地点で、区間賞の日体大・福士優太朗に17秒差ほどまで詰められていたが、最後まで粘りきったのはさすがだ。「(神立橋の)アップダウンが少しこたえた。走りとしては満足できないが、なんとかつなごうと必死だった」(大迫)。夏合宿の後半、捻挫して、追い込んだ練習ができなかったという影響は大きかったと思う。それでも、区間3位だ。ただ、東洋大の1年生・設楽悠太に、1秒といえども、やられたのは悔しいに違いない。

[区間記録]
1位 福士優太朗(日体大)16分45秒
2位 設楽悠太(東洋大)16分55秒
3位 大迫 傑(早 大)16分56秒

<3区>7.9キロ◎八木勇樹

勝負どころを任された八木。西代橋を降りきった4.5キロ地点では、追いかけてくる日体大・出口和也の足色がよさそうに見えた。しかし、ここからは伸びず、逆に八木が離す一方になった。「1、2区と、いい流れでくることはわかっていたので、自分の走りをしようと思っていた。調子もよかったので、後半しっかり走りきることができた」(八木)。夏合宿で、「冬眠あけの八木に期待していいです」と明言しただけの走りは十分に見せた。

駅伝を走り終えた後、八木のこんな笑顔を待っていたファンは多いだろう。まさに「おまたせ」の破顔一笑だ!

[区間記録]
1位 八木勇樹(早 大)23分15秒
2位 鎧坂哲哉(明 大)23分16秒
3位 中村悠二(山梨学院)23分29秒

<4区>6.2キロ◎佐々木寛文

4.6キロ、「美談」駅入口を余裕ある走りで通過する佐々木。ここで心温まる「美談」があったわけではない。美談社(みだみのやしろ)があった地と『出雲風土記』にあるらしい。だから、「みだみ」と読む。話がそれた。「後ろが思ったより近くに見えたので、しっかり走ろうと思った。途中、離れているぞ、という声がして、差が開いているのを感じ、後半もバテることなく走ることができた。夏合宿で調子がよく、十分走り込めた成果が出たと思う」。まったく乱れのない走りで、フジTVが制定するMIR(Most Impressive Runner)に選ばれた(写真下、表彰状と賞品を授与され満面の笑み)。

[区間記録]
1位 佐々木寛文(早 大)17分54秒(区間新)
2位 窪田 忍(駒 大)17分55秒
3位 松枝 翔(山梨学院)18分02秒(8位までが区間新だった)

<5区>6.4キロ◎志方文典

「思い通りの走りができなくて、悔しい。細かなアップダウンがあって、それがけっこうきつかった」という志方は区間5位ながら、区間新。区間3位だった日体大・早川智浩には6秒しか詰められず、平賀につなげた。3.1キロ付近、まだ余裕のある走りだった。

[区間記録]
1位 上野 渉(駒 大)18分30秒(区間新)
2位 本田勝也(東洋大)18分38秒
3位 早川智浩(日体大)18分47秒
4位 井口恵太(中 大)18分51秒
5位 志方文典(早 大)18分53秒(ここまで区間新)

<6区>10.2キロ◎平賀翔太(30分00秒)

早稲田ファンの「ばんざい」のなか、ゴールに向かう平賀。「(野口拓也、高瀬、ジュグナなど)強い選手がいるので、前半から行こうと考えていた。しかし、入りすぎて後半はきつかった。予定タイムより遅かったが、ほかの選手も悪く、結果として区間賞を取れた。自分の仕事はできたので、まずまず満足している」という平賀の安定感は抜群だ。

[区間記録]
1位 平賀翔太(早 大)30分00秒
2位 高瀬無量(山梨学院)30分09秒
2位 キラグ・ジュグナ(第一工大)30分09秒

人が安堵したときに見せる穏やかな笑顔が印象的だった渡辺監督。次を目指す「まなざし」でもあった。

表彰式でも、監督はじめ選手たちは喜びを爆発させることなく、クールに次の舞台を見据えているように見えた。

◎午後6時半からは、島根ワイナリーで「さよならパーティー」が開催された。

チームを支えた三田裕介、牧野和恭主務、猪俣英希、福島翔太副務(向かって左から)がアイビーリーグ選抜の選手たちと、アメリカ国歌を斉唱。牧野、福島は完全にはじけていた。

校友会設立125周年の横断幕を前に、松江、出雲稲門会有志と校歌を歌う選手たち。

最後はお決まり記念撮影。優勝の喜びを知った顔は誰も「美しい」。お疲れさまでした。

2010-10-13