<復路>1月3日
駒大が往路で沈んだとき、多くのファンが早大優勝を確信したに違いない。しかし、箱根はそんなに甘くはない。「まさか」は復路の「下り坂」でも起こった。「チャンスの後ろ髪をつかんだら、絶対に離すな」という金言がある。しかし、転がり込んできたようなチャンスをものにできなかったのは、後ろ髪が駒大ではなく、東洋大だったゆえの、拍子抜けかつ油断だったといえよう。勝負に絶対はない!
[6区]20.8キロ
●加藤創大(愛知・愛知・3年)1時間00分08秒(区間7位)
東洋大はキャプテン・大西一輝が走ると思われたが、2年生の富永光を起用してきた。
その富永を猛追した加藤は、3キロすぎに早くも捉えた。しかし、その直後に腹痛を起こし、8キロで逆転されてしまう。ふたりの「抜きつ抜かれつ」は、さらにつづき、9.5キロで加藤が前に、11.5キロでは、富永が前に。18.8キロで、ようやく加藤が富永を振り切り、デッドヒートに決着をつけた。
加藤が6区で、東洋大に1分以上の差をつけて7区に飛び込むと予想していたが、その差わずかに18秒。ここでの富永の踏ん張りが、東洋大の選手に「いける」という勇気を与えたのは間違いないだろう。
「加藤は、自信をもって送り出した。本人にも最初からガンガンいっていいと指示したが、3キロまではオーバーペースだったかもしれない。いま思うと、私も焦っていたし、加藤も気負いすぎていた。加藤は挫折したほうが強くなる選手。来年は、下りのスペシャリストとして区間新を狙わせる」(渡辺監督)
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[7区]21.3キロ
●八木勇樹(兵庫・西脇工・1年)1時間05秒07(区間2位)
気負いといえば、八木にもあったかもしれない。大差で引き継ぐはずの「予定」が崩れ、自分で決めなければという思いが、オーバーペースの入りになった。
中継所での差18秒が、10キロでは、1分05秒にまで広がっていた。しかし、そこから徐々にペースダウンし、終盤は失速。最後は、飛坂篤恭に12秒差までつめられ、中島へ。
それでも、区間2位。素質の片鱗は見せてくれた。
「10日前に体調を崩して、どうかと思ったが合格点。しかし、実力はこんなものではない。竹澤と同じ練習をこなせるほど強い選手だ。出雲の1区で”やらかしちゃった”ように、少しびびるところがあるので、この経験は、彼をさらに強くするだろう」(渡辺監督)
[8区]21.5キロ
●中島賢士(佐賀・白石・2年)1時間07分39秒
中島はピッチが上がらず、7.8キロで千葉優に追いつかれる。
15キロすぎまでは並走していたが、16.5キロで千葉がスパート。中島はついていけなかった。
「中島は12月いっぱい調子が悪く、7、8区の起用は迷ったところだ。ここは千葉くんの力が一枚上だった」(渡辺監督)
「15キロまでは、なんとかいけると思いましたが、遊行寺の坂でいっぱいいっぱいになってしまいました」(中島選手)
[9区]23.2キロ
●朝日嗣也(鹿児島・加治木・4年)
余裕のできた東洋大の大津翔吾は5キロを15分18秒というスローで入った。一方、追う朝日は、1キロ2分40秒のハイペースで飛ばし、8キロ付近では4秒差までつめ寄った。しかし、大津はそこからピッチを上げ、朝日との差を1分12秒まで広げてアンカー高見諒につなぐ。
朝日の入りを突っ込みすぎだという人もいるだろうが、9区に入ったら、勝つための戦いとして、一気につめるのは当然。東洋大が力をためていたということだ。
(早大がガチガチの大本命だった1994年、まさかの2位で、9区に入った。1位、山梨学院との差は2分28秒。櫛部静二は超ハイペースで、黒木純を追い、一時は40秒差までつめたということがあった。このときも、最後は逆に離されている)。
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[10区]23.1キロ
●三戸 格(福島・磐城・4年)1時間11分18秒
今シーズンなかなか記録が伸びなかった三戸のアンカー起用は意外だった。それだけ、調子がよかったのだろう。後半は気温が上がっていくにもかかわらず、三戸はペースを落とすことなく、ジリジリと高見を追いつめ、41秒差でゴール。監督の期待に十分応えた。
「夏以降、練習をパーフェクトにこなしてきた。本来、優勝するつもりで、9、10区を4年生に締めくくってほしいと配置した。結果はうまくいかなかったが、三戸は区間3位とよく走っている」(渡辺監督)
「凄い応援に元気づけられて走りました。結果を見ると、最初、もう少し突っ込んでもよかったかなと」(三戸選手)